Ⅰ.「生きた就業規則」を備えることで労使間トラブルを予防する。

■就業規則の必然性

労働基準法89条では、常時10人以上の労働者を使用する使用者は、同条1号から10号にわたって規定されている記載事項を記した就業規則を作成し、これを行政官庁(労働基準監督署長)に届け出ることとされています。

従業員が常時10未満なら就業規則は作らなくていいでしょうか。法律上は構わないですが、もちろん多大なるリスクです。また、何十年も前につくった就業規則をそのまま使っているといった状態で日々の労務管理をしている…。これも相当のリスクです。

経営者の経営理念や方針、企業文化、将来ビジョンなどは、企業ごとに千差万別です。それに法律の改正に適応した就業規則に改善していく必要性もあります。実情を反映していない死んだ就業規則や法律改正に適応していない就業規則では、自社の労務管理として運用できるはずがなく、結果として従業員との無用なトラブルや損害を未然に防ぐこと、すなわちリスクマネジメントができません。

■まずは貴社の問題点を洗い出してみましょう。

例えば、以下のような問題を抱えている。

1 労働時間が長く、労働基準法の範囲に収まらない。
2 授業員のモラルが低い。
3 評価基準がなく、賃金のバランスが悪い。
4 募集を掛けても応募が少ない。
5 従業員の定着率が悪い。
6 外国人を採用したい。また、採用しているが労務管理の方法がわからない。

■現状として飲食店様が抱える就業規則の問題点

1 現状の労働条件と実態が大きく異なっている。
2 改正のあった最新の労働諸法令に適応していない。
3 賃金制度・退職金規定の見直しをおこなっていない。
4 服務規律を軽く考えている。
5 懲戒処分に関する規定が曖昧である。

Ⅱ.三六協定書の締結

■三六協定とは?

三六協定は、労働基準法で定められている、1週40時間・1日8時間を超えて働いてもらうことのできる時間を協定するのです。

もし貴社には残業が全く無いということでしたら、締結する必要はありませんが、飲食店で労務管理をされている方でしたら、この協定がいかに重要なものかお分かりだと思います。

なお、三六協定を締結せず、1週40時間・1日8時間の法定労働時間を超えて働かせると、労働基準法違反となり、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられます。(罰則が科される前に是正勧告が先にあることが、一般的ではありますが、絶対とは言えません。)法定労働時間を超えて働いてもらうためには、三六協定の届出は必須です。

実際の締結には、労働基準法の知識が必要となります。また、「働き方改革」による労働時間法の見直しがなされ、変わっていくことも見込まれています。

初めての三六協定の締結、労働時間を大幅に見直される際の三六協定の締結には、専門家にご相談されることをお勧めいたします。

Ⅲ.モチベーションを高める賃金制度と役職

■賃金制度と役職

店舗の規模にもよりますが、従業員様の責任に対する評価を賃金とすることは大変重要なこととなってきます。特に飲食店様の場合は、例えば経営者に代わって指揮命令する立場の店長、店長不在時の副店長的な役割の社員、一般社員、パート、アルバイトが在籍している場合、見た目には、業務の内容にはそれほどの違いはないものの、それぞれにその責任は全くちがうものとなります。

その責任を明確化し、手当や賃金にリンクすることが、従業員様の働くモチベーションに直結するものと考えています。形だけの役職を付けてみたり、明確な説明のない手当の支給は、働くモチベーションの低下を招くばかりでなく、労働トラブルになった際には、会社側の不利にはたらくことにもなりかねません。

まずは、社員様の場合は、役職を整理された上、管理監督者にあたるべき責任者とそれ以外の社員に分類し、それぞれに何段階かの等級を加えていき、本給と手当のバランスをとる手法が適切かと思います。

飲食店様の場合はパート・アルバイトの方も基幹的業務をこなすことにもなりますので、ここのスキルと経験によって、時給だけでなく、役職も与えることで、責任と働くモチベーションが上がることは間違いありません。

売上高、店舗の規模、従業員数等により、制度の導入の方法は多岐多様にわたりますので、賃金制度、手当等でお困りの際には、是非、お問い合わせ頂ければと思います。